愛すべき娘たち

まつを

2006年06月14日 15:17



よしながふみの過去の作品。物語は一貫した流れがあるのだが、それぞれの章の登場人物を取り巻く様々な「愛」を描いたオムニバス的な一冊。とはいえタイトルにあるとおり、母と娘を取り巻く関係を中心としている。



物語は、非現実性と現実のバランスが大切だと思う。描かれる内容とそのバランスによって、妙とも言えるような感覚に陥る秀作が存在する。しかしそれがうまくいかない場合、ちぐはぐしたばつの悪い物、エキセントリックなだけで薄っぺらい作品が生まれてしまう。



そう考えると、この作品は後者なのではないだろうか。

近親者の愛を描く場合に限らず、人間性をテーマにする以上、現実(実社会)との細やかな折り合いが必要になってくる。必要以上に非現実性に富んだ登場人物、非現実的な物語の展開(オチ)。そんな作者のお造りが邪魔をして、本来表現したかったと思われる意図を希薄にしている様だ。



言葉だけではなく、絵が物を言う漫画。

絵がある分だけ小説より、書き手の力量が問われるのかも知れない。



改めて漫画の難しさを考えた作品だった。