2007年04月04日 13:41
野を歩み、霞める空を仰ぎ、草の香を聞き、緩やかなる流水の歌を聴き、撫づるが如き風に向かふが中に、忽ちに堪へ難きなつかしき感の起り来るあり。捉へんとすれば、巳に痕なし。
吾霊其の離れて遠く来れる天の故郷を慕ふにあらざるなきを得むや。
自然は春に於てまさしく慈母なり。人は自然と融け合ひ、自然の懐に抱かれて、限りある人生を哀しみ、限りなき永遠を慕ふ。即ち慈母の懐に抱かれて、一種甘へる如き悲哀を感ずるなり。
「自然と人生」より 徳冨蘆花
財団法人 日本野鳥の会が発行しているフリーマガジン「Toriino」VOL.2に掲載されていたものです。丁度、五木寛之さんが仰った「春愁」って言葉に感化されていたので、目に止まった文章です。
ご存知、熊本県水俣出身の徳冨蘆花。
遠く、故郷の風景を思い出させる、春の憂いを感じさせる、良い詩です。