エロティック・ジャポン

まつを

2011年02月15日 07:00



 エロティック・ジャポン L'Imaginaire Erotique au Japon
  アニエス・ジアール(著) にむら じゅんこ(翻訳)




いやー、またしても衝動買い、しかも高かった。値段に見合う内容かどうかは、各個人の判断にお任せしま~す。どうにかして仏語版が欲しかったのですが(でかくてカラーらしい)、たまたま寄ったアミュの紀伊国屋でみかけちゃいました、それも通常行くはずのない一番右奥辺りでに嫁さんを探している時に。もともと期待していたレゾネっぽいな内容ではなく大量で長いの文字列!読めないフランス語の本買わなくて良かったっス。
内容は、著者であるフランス人女性ジャーナリストが日本の性をストレートに語った評論。文字が多く期待はずれかと思ったんですが、結構噛みごたえのある文章に引き込まれましたよ、半ば強引ですが。日本人が持つ特有の価値観や美学をまったく取っ払った形で、ガツンとこの手の題材を見せられるとちょっとビビリます。だけど面白い事に、それで「気付き」が起こったりするわけです。自分の意識してなかったフェティズムを突然認識させられたり。
全体の文章の雑さ、洋書ならではの日本語訳のニュアンスが気になる所などあったんですが、最後の訳者のあとがきを読んで膝を打ちましたよ。著者の極端な日本の認識を上手に訳し直し、かつ比較文化的な側面を壊さぬよう不自然なテキストをあえて残し違和感のある文章にしてあるようです。この匙加減は理解出来そうも無いけど凄い事だってことはわかりますよ。
数多くの側面から箇条書きされたこの本、著者は総括するような文章を残しておりません。フランス人の為の日本性風俗百科とでも言いましょうか?内容は兎も角として、この本がフランスで沢山売れている事に何かがあるのでしょう。彼らが日本の何かに強い欲求を持ち、私たちは多少の誤解を受けながらも発信し続けているのです。


中で紹介されていた作品を(好みで)抜粋してご紹介致します。

まずはカバー絵として取り上げられている「月の沈むまで」が収められた「ナルシスの祭壇」。ご自身のホームページのトップページにも使用されています。(解りにくい!股間のバラをクリック)いやー、美しい、ゾクゾクしますねぇ。この絵に誘われて本題の書を買った人、少なくはないはずです。でもなかなかこの画集をポチッっとする勇気がありません、家人に見られたら・・・、人間が小さいのです。

日本酒業界では特に知名度があるはず、高井株式会社の痴虫のラベルでおなじみの作家さんです。独特の作風は早くから海外で注目され、多数の作品集も発売されています。春画、江戸というより昭和、何か一抹のノスタルジーを感じさせてくれます。この「あかいはこ」から数点紹介がありました。


会田誠氏の1997年の作品、実は私まだ読んだ事がありません。アニエス・ジアールは、太平洋戦争に敗北し日本人男性性の自尊心が失われたと述べ、その一つの要素として同書を紹介しています。ですがあくまでも一つの要素として。ここで彼女は、日本人男性にとって一番大切だったものを別に紹介しています。なかなか面白い文章ですので是非読んでみて下さい。

世界でも類を見ない、百花繚乱の如き性産業が介在する日本、この現実をまとめ上げる事は日本人でも容易な事ではありません。ただ個別の職種紹介となってしまった第10章、ここで紹介されていたこの本に原点を読み取る事が出来るかも知れません。「性風俗の歴史を知らずにキレイ事を語る者は本書を読むといい。そこには人が人であることの切なさや愛らしさが見えてこよう。」この帯の言葉はグッっとくるものがあります。



最後に紹介されてた絵と写真を少し。

森口裕二
  
   トランク      遠い遠い夏の日 


木村了子


   Beauty of my dish 桜下男体刺身盛り 

   月飛行 おいらん道中図 




   Beauty of my dish 私のケーキ皿  
   人魚達の宴図 


島隆志





田亀源五郎








その他


   小林永濯 天瓊を以て滄海を探るの図   
   上田風子 マドンナの真珠 
   橋口五葉 湯浴の女 









   金井清顕 スーパーソリス      吉田良 人形





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